少しずつあたたかくなり、春の気配が感じられる季節になってきました。ラッパーや俳優など多方面で活躍しながらも園芸家の顔を持ついとうせいこうさんは、長年続けてきたベランダ園芸家(ベランダー)から室内園芸家(ルーマー)にシフトしつつあるそうです。そこで今回は、いとうさんが東京新聞で連載してきた人気コラムを書籍化した『日日是植物』から、2019年7月のエッセイを紹介します。
ニチニチ草
素人園芸家のための聖典『ボタニカル・ライフ』(俺のほぼ25年前のエッセイ群)の、ほとんど冒頭にニチニチ草が出てくる。
断然強いニチニチ草を当時俺は「ニチニチ三等兵」などと呼び、ベランダのあちこちへと「斥候」に出しては、日当たりや風の具合を調べるのに使っているのだが、今回読み直したら「花屋では600円くらいで売ってるし」などと書いているのに引っかかった。
1996年頃にはそんな物価だったのだろうか。いくらなんでもニチニチの野郎がそんな「高値の花」なわけがない。
少なくとも俺の中で奴のイメージは常に100円に値崩れしている庶民的な鉢植えなのだし、事実2カ月ほど前に俺は路上に現れた花屋が「オール100円」でニチニチ草を売っているのを見つけ、狂喜しておじさんの手からそこに並べられた5種類のオールを100円で買ったのである。しめて500円。ワンコインだ。