多彩に楽しまずしてどう生きる?
昔、ベランダで育てていた頃は、ここまで近い距離になかった。
だからスクリューみたいな形の芽が日々どうやって突き出して来るか、水が足りないと葉がタバコみたいに縦に巻いてくる過程、開いた花の中心にある微小な穴の精巧さ、そして花のあとで伸び伸びと空を射す黄緑色のトウガラシみたいな種袋(俺は幾つかを選んでアルミホイルで軽く巻き、いつ弾けても採種出来るようにしている)……。
俺はそれらをしつこく見つめ、より花の調子のいい鉢を最上段に持ってくるという、日々の「グランプリ発表」を繰り返している。それどころか、お気に入りの小鉢を水で満たし、朝になる度に落ちている新鮮な花を拾ってはそこに浮かべているのである。
この不況下で、500円をここまで多彩に楽しまずしてどう生きる?
※本稿は、『日日是植物』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。
『日日是植物』(著:いとうせいこう/マガジンハウス)
生きとし生けるものが愛おしい!
「ベランダ園芸家」改め「室内園芸家」による、ドラマティック植物生活の記録。





