(写真提供:ヤマザキマリさん)

 

パーフェクト・ゴールドメダリスト

スピードスケートに対する嫌悪感が和らいだのは、1980年の冬季オリンピックでエリック・ハイデンというスピードスケート選手を知ってからだ。

出場したすべての種目で金メダルを獲得したことからパーフェクト・ゴールドメダリストと称されていたハイデンの、黄色いスケートスーツに身を包んだ姿をアップリケにして、家庭科の課題だったエプロンに貼り付けるほど私はこの人に惹かれていた。

私が大嫌いでたまらなかったスピードスケートで、白い歯を見せて微笑みながら悠々と競技に挑んでいる心のゆとりと、氷の上を疾風のごとく無駄のないフォームで滑りこなしているその姿が、ただただかっこよかった。

しかもハイデンは、このオリンピックが終わると潔くスピードスケート界から引退し、ウィスコンシン大学を経てスタンフォード大学大学院で医学博士号を取得、外科医となった。