北海道で暮らしていた幼少期、校庭に作ったスケートリンクでさせられたスピードスケートが嫌いだったというマリさん。しかしその後、スピードスケートに対する嫌悪感を和らげたある出来事があったそうで――。(文・写真=ヤマザキマリ)

スピードスケート考

むかしから運動という目的のために体を動かすことが好きではなかった。北海道に暮らしていた幼少期、昆虫を捕まえるために山を走り回ったことで培った運動神経は体育の授業でも存分に発揮され、短距離走や走り幅跳びの選手として地域の競技会にも出場させられていたが、昆虫を捕まえるという目的のために走るのとは違い、他者と能力を競い合うために走るのは苦手だった。

当時私が暮らしていた北海道の街では、冬になると雪が積もった校庭に水を撒いて大きなスケートリンクを作り、子どもたちはそこでスピードスケートを学習しなければならなかった。

当時は今のようなハイテクな防寒用ウェアもないから、氷点下の気温と格闘せねばならず、それだけでもつらいのに、自分たちが作った氷の上を心許ない細い金属の刃に体重を預け、滑りの速さを競い合うこのスポーツを、私は心の底から嫌っていた。

一度だけ担当の先生に「スピードスケートを学ぶ理由は何ですか。将来何の役に立つんですか。氷の上を猛スピードで滑らなければならない用事って、いったいどんなことですか」と、質問したことがあった。

先生にしても寒い中で子どもらにスケートを教えるのは快いことではなかったのだろう、私のその質問に対し苛立ち丸出しの声で「余計なことは考えない! 氷の上を滑る爽快感を楽しめばいいの!」と返された。