外国為替取引で5千万円稼いだ先輩
あるとき、会社の仲の良かったT先輩が、わたしをひと気のない部屋に呼び出して、かれが家から持ってきたパソコンをこっそり見せてくれた。
数字ばかりのエクセルの表だ。
外国為替取引で5千万円稼いだというのである。下準備や勉強に1年を費やし、シミュレーションをして、やったというのだ。
Tさん、得意気になんかうれしそうな顔をしてたなあ。憎めない人だった。
わたしは「へー」と驚いただけである。
とてもそんなことをする人には見えなかったが、そういえばかれは、会社が終わった後、村田簿記とかの学校に通っていた。
5千万円と聞いて、安月給の悲哀が沁みていたわたしは、いいなあ、と思った。
単純に羨ましかったが、しかしかれほどの努力をする気のないわたしに、羨む資格はないのであった。
※本稿は、『老後がめんどくさい』(草思社)の一部を再編集したものです。
『老後がめんどくさい』(著:勢古浩爾/草思社)
「老後は楽しめ」「前向きに生きろ」「健康に気をつけろ」「趣味を持て」――等々、現代の老後には、“やるべきこと”があまりに多い。
本書は、そうした社会の空気に対して、著者が「めんどくさい」と率直に感じる感覚を出発点に、老い・幸福・お金・運・社会の同調圧力について思考していく老後論&人生論である。




