外国為替取引で5千万円稼いだ先輩

あるとき、会社の仲の良かったT先輩が、わたしをひと気のない部屋に呼び出して、かれが家から持ってきたパソコンをこっそり見せてくれた。

数字ばかりのエクセルの表だ。

外国為替取引で5千万円稼いだというのである。下準備や勉強に1年を費やし、シミュレーションをして、やったというのだ。

Tさん、得意気になんかうれしそうな顔をしてたなあ。憎めない人だった。

わたしは「へー」と驚いただけである。

とてもそんなことをする人には見えなかったが、そういえばかれは、会社が終わった後、村田簿記とかの学校に通っていた。

5千万円と聞いて、安月給の悲哀が沁みていたわたしは、いいなあ、と思った。

単純に羨ましかったが、しかしかれほどの努力をする気のないわたしに、羨む資格はないのであった。

※本稿は、『老後がめんどくさい』(草思社)の一部を再編集したものです。

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