悪意を超えて「読ませる」魅力
映える写真をSNSにあげ続け、互いを肯定しあう臆病な3人組や、ネット通販に依存しすぎた女など様々な人々の暗部を活写した1冊だ。
その人物造形には悪意がある。主人公たちはこの世界を俯瞰し、他者の俗人性より高みに立っているが、その彼ら自身にこそ愚かさがある。そのことが読者にだけ巧みに俯瞰させるように描かれている。
人物だけでなく、彼らの放り込まれる状況がどれも面白い。海外旅行に出た3人組は常にスマホの充電先を探し、自撮り棒を持って旅の「よさ」を肯定し続ける。犯罪者に拉致され、生命の危険が間近になってさえ自撮りをやめられない。ネット通販依存症の女は倹約家夫婦のキャンピングカーに乗る羽目になり、気持ちや価値観を存分に揺さぶられる。
あいみょん曰く「正直、後味が悪いんですが(笑)、一度ページを開くと止まらなくなりますね」(「ダ・ヴィンチWeb」19年4月19日公開)。たしかに。悪意を超えて「読ませる」エンタメ的な魅力が本書にはある。
あいみょんの奏でる音楽には後味の悪さは決して感じないが、ただ爽やかでもキャッチーなのでもない、うっすらと暗い気配もある。だが悪意や人の愚かさが露骨に出ているわけでもない。それらを咀嚼できる、小説と同質の明晰さが彼女の曲作りにも発揮されているのだろう。
イラスト:死後くん
