彼だけのすさまじい勘
港町に暮らす少女の物語だ。
だらしない、しかし子供のように無垢で純粋な母親に育てられる娘の葛藤と成長を、周囲のさまざまな人物と自然が包み込む。読みやすい文章で魅力的に描かれる一方で、主人公だけが聴きとれる世界の声が自然に溶け込む幻想小説の趣もあり、けなげな母子の人情噺で、これは落涙する人も多かろう。しかし、別にさんまをひねくれ者と思ってなかったが、割に素直な感性だな、とも感じる。
西作品を映画化しようとしたきっかけを問われて「本屋さんに(西加奈子の)『サラバ!』が置いてあって。それでパッと本をめくったら“明石家さんま”って自分の名前が書いてある。それで買って、全部読んだらそのときの一度しか出なかった」と笑わせている(公開時コメントより)。西作品の関西弁のうまさに惹かれた、と続けるが、その後も、原作や映画に関するコメントのはずがいちいち笑いを取りに寄り道するのが他の有名人のインタビューとまるで違う点だ。
しかし、なんだ。誰でも本を「パッ」と買うものだが、その選び方には彼だけのすさまじい勘があるように思えてしまう。アニメのツヨシと漫画の鷹と小説の肉子ちゃんの並びに、既存の価値観の定規は当てはまらない。テレビのひな壇に並ぶタレントのことも、常人には分からない反射的ななにかで感受しているのだろう。
※本稿は、『有名人の愛読書、読んでみました。』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『有名人の愛読書、読んでみました。』(著:ブルボン小林/中央公論新社)
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