伊坂幸太郎のデビュー作
高校1年のときに出会って「肌身離さず持ち歩いて、繰り返し」読んだという(「ダ・ヴィンチWeb」21年1月13日公開)。人気作家、伊坂幸太郎のデビュー作だが、読んだら「うわ、デビュー作っぽい!」と声が出た。
決して下手くそということではない。彼女も「頭の中でちゃんと情景が映像になって、登場人物たちが命を持ち始めて」(同前)と絶賛するほどで、文章は安定している。
江戸以後も鎖国を続けてきた東北の島で、未来を見通すことのできるカカシが殺された。こう書くと分かるが、ファンタジーでありミステリーだ。
殺人を許容された男、太りすぎて店から帰宅できなくなった女、出会う人物のいちいちが奇想だが、淡々と、でも欲張りに混沌を書ききるんだという、作家のデビューに発揮されるであろう漲りが感じられ、気圧された。伏線回収もしっかりされるし、執拗なほどに強調された生来の「悪」と、その強い否定も打ち出される。濃いわー。
これを肌身離さず! と思うとき、静かでサバサバした印象の彼女の内面に宿る荒々しい混沌を垣間みたようにさえ思えてくるのだった。
※本稿は、『有名人の愛読書、読んでみました。』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『有名人の愛読書、読んでみました。』(著:ブルボン小林/中央公論新社)
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