著者になにか伝えられるとしたら
「その本の著者に何か伝えられるとしたら」なにを伝えるか? という質問への回答がすごい。「『大江健三郎さんの本が肌に合う』と言ったことをあやまります」だ。
普通、素晴らしい本をありがとうとか、感謝を述べるだろう。作者に謝罪する人なんて前代未聞。形容がすぐ浮かばないが、一番近い言葉は「高貴!」。
彼女はまだ若い。本書は大江作品の中でも初期の作が多く収録されている。『罪と罰』や『赤と黒』のような、若者のときに読むべき、熱に満ちた文章の集積で、それが彼女の血肉になっているのだとしたら、その落ち着きにも風格にも納得感がある。
「国民全員に本を1冊配れるとしたら」という、つまり「超オススメ本は?」程度の質問への回答は「『群像』をひと月に1冊」。純文学の文芸誌の群像をだ。しかも、「1冊配れるとしたら」という質問なのに、これでは年12冊だ。もし叶ったら、こっちは「下賜」される気持ちだ。今後のご活躍も仰ぎ見るし、読書の言葉の更新も伏して待つ。
イラスト:死後くん
