竜童さんがブラスバンドでトランペットを吹いていたのは、中学生の時からだとか。
――ええ、ブラバン部には中学2年から入って高3まで。学校には勉強に行ったというより、ラッパを吹きに行ってたって感じですね(笑)。
で、中学の卒業式から帰宅したら、うちの前にトラックだのリヤカーだのが。何だと思ったら引っ越しでした。親父は元船乗りで、それから船具を作る事業に失敗し、庭のある家から下高井戸の新築だけれど棟割長屋みたいな借家へ引っ越したんです。
でも親父の次の就職が決まって、もう少しましな借家に住めるようになった。私はそういう時でも、まったく親の心子知らずで陽気な学生生活を送っていました。
附属校から明治大学に推薦で入れましたが、ここでもラッパ吹いてるだけの日々(笑)。入学式が終わるとすぐに、ブラバン時代の先輩たちから呼ばれました。
彼らは大学でジャズバンドをやっていて、「お前、ラッパやれ」と譜面を渡された。「初見で吹いてみろ」と言われて吹いたら、「お前うまいな、今度はアドリブでやってみろ」。
アドリブってなんですか? と聞くと、「フェイクして吹くんだよ、自分なりに崩して吹くんだ」。吹いてみたらみんなびっくりして、「お前、アドリブできるんだな」って。
私はアドリブができることをそんなにすごいことだと思ってなかった。でも、即興演奏ができるってことは作曲もできるなと、その時、急に思ったんです。ですからあの時、先輩たちにジャズバンドに引きずり込まれなかったら、音楽の道に進んでいなかったと思います。