話をイタリアに戻す。交通機関だけではない。ホテルにしても、美術館やレストランにしても日本を発つ前にネットで予約を取っておくことが必要だという。こういうネット予約システムも「日本だってそうですよ」と言われたら身も蓋もないけれど、普段から動きの鈍い老夫婦である。十数年ぶりに自力で大移動をすると、驚くことだらけなのだからお許しいただきたい。

フィレンツェのウフィツィ美術館も、その日の気分でぶらりと立ち寄ればいいかと思っていたが「甘い!」と友人に教えられた。

「ちゃんと何月何日の何時に行きたいとネット予約しておかないと、館内に入ることすらできないよ」

当初はミラノにある「最後の晩餐」も見るつもりでいたが、出発二ヶ月前に日本からネット予約を試みたところ、すでに満員だと拒否された。

しかし、そもそも旅は道連れ、事の成り行きと言うではないか。……言わないか。でも私は昔から、旅の計画はあまり厳密に決めたくないタチである。ふらりと列車に乗り、ふらりと駅を降り、いい街だなあと思ったところに一泊する。期せずしてその土地のおいしい食事に出合い、宿に戻ってベッドの上に地図を広げ、「明日はどこに向かおうか」と思案する。危険を冒す度胸はないので、結局たいした冒険はしないが、若い頃はそんな行き当たりばったりの旅をするのが好きだった。