拘置所職員への共感と感謝

村木さんの優れた人格をよく表しているエピソードがある。

厚生労働事務次官になる約2年前の2011年に、彼女は『あきらめない──働くあなたに贈る真実のメッセージ』(日経BP社)という本を発表した。そのなかで村木さんは保釈の際のこんな話を綴っている。「拘置所の職員さんたちにお礼を言わないまま出てきてしまったことが今も心残りだ」と。

鎌田實、村木厚子
医師で作家の鎌田實先生(左)と元厚生労働事務次官の村木厚子さん(右)(写真提供:潮出版社)

これには驚いた。冤罪被害で5カ月も不当に勾留された身である。拘置所の職員には何の落ち度もないことは分かっていたとしても、そうした気持ちになるものだろうか。自分を勾留した側の人間として、ネガティブな感情を向けたって仕方がない。このことについては、ぜひとも直接話を聞いてみたかった。

「同じ公務員としての共感があったのかもしれませんね。彼女たちはかなりハードワークで、本当に一生懸命に働いていたんです。交代制とはいえ、24時間体制で各フロアの廊下に職員が一人立っていましたしね。多くの人は刑務所のすぐ近くの官舎に住んでいますし、どれだけ受刑者のために働いても犯罪を繰り返してしまう人だっているわけです」