死が私たちに微笑みかける前に

時は2019年10月12日。場所はアイルランドの小さな墓地。シェイ・ブラッドレイという人物の埋葬が執り行なわれていた。寒いが、太陽は燦燦と照っている。

棺が墓穴に降ろされたところで、「お~い、お~い、お~い、出してくれ!」とシェイが叫ぶのが聞こえた。

会葬者たちは一瞬戸惑ったが、笑い出した。

冗談好きだったシェイは、長患いで死を覚悟したときにこれを録音し、葬式で流すように家族に頼んでいたのだ。「Shay Bradley」でネット検索すれば、シェイの埋葬の様子を映した動画を見ることができる。

死が私たちに微笑みかける前に、こちらから死に微笑みかけるべきだ。だがシェイは、それ以上のパフォーマンスをやってのけた。

死後に自分の死を笑い飛ばしたのだから!

※本稿は、『死体は語りだす:法医学医が読み解く「死者からのメッセージ」』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

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死体は語りだす:法医学医が読み解く「死者からのメッセージ」』(著:フィリップ・ボクソ 訳:神田順子/三笠書房)

一見すると不可解な死の裏側には、人間の弱さ、色恋、憎悪、執念、そして切ない想いが隠されていた――。

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