(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
厚生労働省の「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」によると、令和6年は合計で160万5378人が亡くなり、前年から2万9362人増加したそうです。「多死社会」といわれる日本で、人はどのように死を迎え、その過程では何が起こっているのでしょうか。今回は、検視官として3年間で約1600体の遺体と対面した、立教大学社会デザイン研究所研究員・山形真紀さんの著書『検視官の現場-遺体が語る多死社会・日本のリアル』から一部を抜粋し、現代社会が抱える課題に迫ります。

親族の引き取り拒否

やっと10月になったもののまだまだ暑さの残る昼下がり。アパートの住民から異臭の訴えがあり、管理会社が当該部屋に行ってみるも玄関が施錠され、インターフォンを押しても応答がないことから、警察に安否確認の連絡が入りました。

警察官立ち会いで鍵屋が解錠し内鍵を切断して扉を開けたところ、80歳代の女性の遺体を発見。救急隊を呼ぶも高度腐敗状態のため社会死状態と判断されて病院不搬送という状況です。

検視の結果、事件性は認められませんでした。死亡時期は発見の約1ヶ月前、死因は病死と検案され、身元も特定されました。

死者は都内で生まれて両親と実弟の4人家族、やがて就職して結婚。子どもはおらず仕事を定年まで勤め上げ、退職後はアパートに夫婦で暮らしていたものの、先に夫が死亡したため一人暮らしで年金生活を送っていたとのこと。実弟とは長らく音信不通のようです。