引き取り手のない遺体の現状
親族調査に時間をかけるか否かは、遺体の保管施設の状況などにも左右されるようです。保管できる期間が短ければ早期火葬が必要となり、後に親族とトラブルになるリスクもあります。
一方で、長期間の保管には費用や遺体の損傷といった別の課題が生じます(日本総合研究所「行旅病人及行旅死亡人取扱法、墓地、埋葬等に関する法律及生活保護法に基づく火葬等関連事務を行った場合等の遺骨・遺体の取扱いに関する調査研究事業 報告書」)。
このような引き取り手のない遺体に対し、現行の法や制度では十分に対応できていないのが現状です。
※本稿は、『検視官の現場-遺体が語る多死社会・日本のリアル』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『検視官の現場-遺体が語る多死社会・日本のリアル』(著:山形真紀/中央公論新社)
現役の検視官として3年間で約1600体の遺体と対面した著者が、風呂溺死から孤独死までさまざまな実例を紹介し、現代社会が抱える課題を照らし出す。
死はすぐ隣にあり、誰もが「腐敗遺体」になる可能性がある……この現実をどう受け止めるべきか。
そのヒントがここにある。




