忘れもしない夏の日

1998年。忘れもしない夏の日。

小学5年生、11歳の私は東京軒にいた。

『没頭飯』(著:鈴木もぐら/ポプラ社)

妹の2歳の誕生日祝いでとんかつを食いにきたのだ。

母も私もロースカツ定食を注文した。当時の値段はうろ覚えだが、ロースカツ定食が1100円、ヒレカツ定食が1300円ほどだったと思う。平屋のぼっとん便所、市営団地住まいである我が家からしたら相当な贅沢である。

15分ほどでとんかつが到着。

堂々とした大判のロースカツ。

肉はぷりぷりで、脂身が水晶のように輝いている。

揚げたてのとんかつにソースをかけ、口へ運ぶ。

うまい。美味い。旨い。うますぎる。

カツ1切れで倍量の飯を頬張る。脳はうまいに支配され、他のなにも考えることを許されない。立ち入れない。これが幸せである。自分はなにもしていないのに、妹が2歳になったことでこんなにも幸せになれた。ありがとう。兄妹は偉大である。