「8020運動の普及」で大人むし歯が急増

ここで素朴な疑問が湧きませんか? 「子どもむし歯は過去最少なのに、なぜ高齢者のむし歯は増えているのかしら?」――その理由は、皮肉にも私たちの「努力の成果」にあります。

「8020運動」前の昭和の時代であれば、高齢者になれば歯を失い、入れ歯になることが一般的でした。入れ歯はむし歯になりません。

ところが「8020運動」の成功により、自分の歯が20本以上残っている人が6割を超えました。

歯が多く残っていることは、健康面で多くメリットがありますが、それだけむし歯になる機会が増えるという側面も。さらにそこに「加齢」という避けられない変化が加わります。

年をとると歯ぐきの地盤沈下が起こり、痩せて(退縮)、歯の根っこが露出するように。また歯周病があると、進行はさらに加速します。この露出した根っこが、大人むし歯の戦場となるところです。

若い頃、歯を守ってくれたのは歯の表面をコーティングしている「エナメル質」でした。鎧のように硬いエナメル質は、むし歯菌に強く、歯の苦手な状態(酸性)でも耐え忍ぶ力がありました。

しかし、露出した根っこにはこのエナメル質がありません。剥き出しになっているのはエナメル質の硬さの1/4程度の「セメント質」と「象牙質」です。これらは、むし歯の進行速度がエナメル質より2〜3倍程度速くなると言われています。

さらに、加齢とともに唾液の分泌量が減ることも一因に。唾液はお口の殺菌作用や洗浄作用があり、いわば「自浄クリーニング」の役割を担いますが、唾液が減って口の中が乾燥すると、その恩恵はなくなります。

唾液が減り、弱い根っこが露出し、そこにむし歯菌が停滞することが、「8020運動」を達成した真面目な高齢者を襲う大人むし歯急増のメカニズムです。