実質賃金の引き上げに向けた労組の課題

トランプ関税という厳しい逆風も吹いている。関税で輸出関連の中小製造業の企業収益が大きく悪化すれば、賃上げ原資が枯渇する可能性がある。そうした中で、「好循環」はやはり無理筋だったのではないかとの悲観的な声も聞こえてくる。

実質賃金が改善してこなかったのはなぜか。労使双方に原因がある。まず労組だが、連合は、春闘での賃上げ目標を決める際に、過年度の物価上昇率を用いることを慣例としている。例えば、連合が24年11月に公表した25年春闘の目標は「5%超」だったが、その計算のベースになったのは過年度である24年度の物価上昇率だった。

『インフレの時代-賃金・物価・金利のゆくえ』(著:渡辺努/中央公論新社)

過去の物価上昇率を追いかけるかたちで目標が決められるので、物価の加速局面では、賃上げが物価に追いつかないという、いたちごっこが起きる。慢性デフレ期は物価上昇率が毎年ほぼゼロだったので、過年度方式でも何ら不都合はなかった。しかし今は物価が毎年上がるので旧態依然のやり方が通用しない。

春闘のオーバーホールが急務だ。こうした中、連合は、25年夏に有識者委員会を発足させ、23年以降の3年間における労組の戦略が適切だったか否かの検証作業を行い、その結果を踏まえて、26年以降の春闘方針を固めると発表した。