実質賃金の引き上げに向けた経営側の課題
一方、企業側の課題は生産性の上昇だ。実質賃金の持続的な上昇には生産性の上昇が不可欠だ。これに関連して、政府は、25年の骨太方針で、実質賃金が毎年1%ずつ上昇する社会の実現に向けて、今後5年間を集中取り組み期間と位置づけ、官民の資金投入を行う方針を固めた。
物価については日銀の目標値は2%だ。したがって、実質賃金の毎年1%の引き上げは、名目の賃金が毎年3%ずつ引き上げられることを意味する。つまり、ベースアップ(春闘での賃上げのうち定期昇給分を除いたもの)が3%ということだ。これが実現できればまさに「好循環」であり、国民の多くがメリットを実感できる。
この実現には中小企業における生産性の引き上げ、特に、飲食や宿泊業など、これまで生産性の伸びが芳しくなかった業種での引き上げが不可欠だ。ロボットやAI(人工知能)を活用した省力化投資を集中的に行う必要がある。
下図に示した2026年以降の実質賃金の値(濃いグレーの丸がついた線)は、骨太方針に沿って実質賃金が毎年1%ずつ引き上げられた場合の予測値だ。実質賃金の現時点の水準はインフレが始まる前の21年と比較して6%低いが、31年には21年の水準まで戻すことができる。ただし、実質賃金の22年以降の低下分の累積は、現在の16%から出発して、これをすべて解消するのは2039年という試算結果であり、実質賃金の正常化にはなお多くの時間が必要であることを示している。