ところが夕方になっても痛みが続くというので、かかりつけの整形外科の先生に往診を頼み、先生が来る前に車椅子に母を乗せたところ、あまりの痛みに白目をむいて失神。そこでようやくただごとではない、と救急車を呼ぶことに。運ばれた大学病院で骨折がわかり、私は自分の行いを悔いるばかりだった。
その日のうちに医師の指示で、近所の中堅病院に移動。しかしコロナ下だったため、PCR検査の結果が出るまでは一般病棟には入院できず、コロナの疑いのある患者たちと同室になると言われた。
骨折よりもコロナ感染が心配で、私は入院を断り、母を家に連れ帰ることに。しかしこれも間違いだった。母は骨折による血管損傷で、太股内部に出血が起きていたのだ。
翌日、母の太股に広範囲のあざを見つけ、再び救急車を呼ぶ。母は都内の総合病院に運ばれ、大量出血のためすぐに輸血となった。全身状態の悪化は落ち着いたが、私は「母をこんな目にあわせて、親不孝者だ」とひどく落ち込み……。
処置室のベッドに横たわる小さな母に「ごめんね」と言うと、母は優しい声で「あなたが悪いんじゃないよ、お母さんの体が悪いんだ」。この期に及んで娘をかばう、健気な母の様子に、涙するしかなかった。