「建て直しを決めたのは、昔から我が家にあった思い出の樹木を、少しでも残したいから。売って更地になれば、木はすべて伐採されてしまいます。」(檀さん)
自身が生まれ育った家を20代で建て直した。数年前には区画整理で敷地が半分になり、3番目の家を建てることに。父である作家・檀一雄さんの蔵書や母の着物を整理し、見えてきたこと(構成=篠藤ゆり)

家の建て直しで遺品の整理に直面

生まれた時から住んでいた場所に新しく家を建て直し、2018年の秋に引っ越しました。新居はそれまでと同じく、下の兄家族との二世帯住宅です。

20年近く前から道路の拡幅が始まり、うちも半分が、計画に引っかかっていました。ただ、母が高齢で認知症の症状もあったので、急激な環境の変化はよろしくないと思い、交渉の席にはつかずにきたのです。

15年4月に母が亡くなり、違う場所に引っ越すのか、半分になってしまう土地に家を建て直すのか、いろいろな方に相談しながら検討。翌年から改築に向けて動き出しました。建て直しを決めたのは、昔から我が家にあった思い出の樹木を、少しでも残したいから。売って更地になれば、木はすべて伐採されてしまいます。

それまで住んでいたのは、私が20代半ばに施主となって建てた家(2番目の家)です。若い身空でそのような決断をしたのは、生まれ育った家(1番目)の雨漏りに耐えかねたから。父は普請が好きで、増改築を重ね、家はつぎはぎだらけ。とにかくものが多く、蔵書にいたっては1万冊近くありました。

2番目の家はかなり大きな建物で、回り廊下を設け、壁一面を本棚にしました。それでも足りないので、廊下の床下にも本がしまえるように。収納もたくさん作り、古家にあったものはほとんど捨てず、収納の中にしまいました。その作業は、大正生まれで「ものを捨てられない人」だった母がすべてやったので、私はどこに何があるのかも知りませんでした。