施設に自ら入居した両親

<佐々木さんの両親は札幌に自宅があったが、元気なうちからサービス付き高齢者住宅に入居。お金やお墓などを準備してくれていた>

私がヘルパーの資格を取ったことをきっかけに、両親は、老後の面倒を私に見てもらうつもりでいました。「これで安心だ」「自宅で介護してもらいたい」と折に触れ、話していたんです。

ところが、私が2009年に乳がんになりました。仕事の都合で東京の娘の家に一時的に滞在していた時に乳がんが発覚したので、そのまま治療のために私が札幌から東京に移住してしまった。札幌に住んでいた両親は、私に面倒を見てもらうことは無理だと思ったのでしょう。それから4年後の2013年、何の相談もなく、いきなり札幌の自宅を売って夫婦で施設に入居してしまったんです。両親が70代前半の時でした。

施設で暮らす両親と会うのは夏と冬の年2回ほど。そんな生活を送るなかで、2018年、父が「母の様子が変だ。何か見えないものと話をしている」と言うようになったんです。さらに、施設の職員からも「お母さまの様子がおかしい」と頻繁に連絡が来るようになりました。母は、理性的で頭の良い女性だったので信じがたかったのですが、話を聞くうちに、母が幻を見たり聞いたりしていると分かったんです。

母は、自分が悪口を言われているという幻聴に振り回されるようになりました。幻聴に促されて他人を悪く言いだしたこともあります。攻撃性が高まり、けんか腰の口調になってしまった母を見るのはやるせない思いになりました。

親戚が運転している車に一緒に乗っていた時のことです。幻聴があったようで、後部座席の母がいきなり、走行中の車のドアを開けました。慌てて閉めましたが、母が幻聴や幻覚に振り回されている時に、黙って様子をうかがっているだけだと危険だと痛感して、肝が冷えました。