(撮影:西尾豊司〈Rongress Inc.〉/画像提供:『育つ、育てる。対話力 話し下手が強みになるニクヨ式会話術』KADOKAWA)

電話受付の仕事はとにかく数がこなせます。基本的に通話は録音されているので、失敗した時やうまくいかなかった時は簡単に振り返ることができます。それもまたコミュニケーションの改善に大いに役立ちました。

その中で一番しんどいけど、一番効果的な改善方法がありました。それは「会話を文字起こしすること」でした。文章にして会話を振り返るという一見シンプルなことですが、これが非常に役に立ったのです。

文字起こしをして、会話を活字にすると、だいたいお客様との話がこじれる原因は会話が噛み合わないことが原因だとわかります。お客様が聞かれていることと、こちらの話している内容が噛み合わないと、お客様はフラストレーションを抱え、クレームにつながるのです。

たとえばお客様がキャンセルの申し出をしてきた場合、まずはキャンセルの可否を答えなければならないのに、オペレーターが約款や規定にあるキャンセルの条件から案内し始めてしまうことがよくあるのです。でもまずはお客様の求めていることに答えないと「この人は話を聞いているの?」ということになりますよね。

本来は結論を言ってから、理由を言わなければならないのに、長々と理由を言い始めて、結論まで時間がかかってしまうと、私でもイライラします。

そういった齟齬が起きないように、たいていのコールセンターでは「傾聴」をスローガンに掲げているのです。でも、実際に傾聴することはとても難しいのです。

こちらが傾聴して適切に回答をしても、相手がヒートアップして、対話ではなく、言いたいことを言うだけという展開になることもあります。そういった際には「さようでございますか」を丁寧に使いながら「聞いていますよ」というアピールをして、お客様に落ち着いていただき、再び対話モードに戻すということもしました。

このことから何を学んだのかというと「結局どんな口語の対話でも、日本語の文章にして意味が通じ合って、話が噛み合わなければ、対話の意味がない」ということです。

以来、私は話をする時も「後で文字起こしをした際に、しっかり文章としても成立しているか」ということを最重要点として考えるようになったのです。