あれほど母の癖が嫌だと思っていたのに、今頃になって、あの時の母の気持ちが理解できるようになりました…(写真:stock.adobe.com)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは千葉県の70代の方からのお便り。60代の頃から総入れ歯だったという母親の、ある「癖」がとても嫌だったそうで――。
嫌だった母の癖
70歳を過ぎてから急に体力の低下を感じ、市の健康診断でも検査の必要あり、と言われてしまいました。今のところ大事には至っていませんが、やはり年には勝てなくなってきたようです。
それに輪をかけ、大事な歯が1本、また1本と抜けてきて、とうとう部分入れ歯をする羽目に。もともと歯が丈夫なほうではなく、私の母も、60代の頃には総入れ歯になっていました。
母は、入れ歯がうっとうしくて仕方なかったようで、外出する時は嫌々つけていましたが、家に帰ってくるとすぐに外し、所かまわず置きっぱなしにしていたのです。私はそれがとても嫌で、何回も注意していましたが、結局亡くなるまで直らず……。
それが今では、私も外出から戻ると部分入れ歯をすぐに外して、テーブルの上に置きっぱなしにしてしまうのです。あれほど母の癖が嫌だと思っていたのに、今頃になって、あの時の母の気持ちが理解できるようになりました。
本当はきちんとつけていたほうがいいのに、外した後の爽快感がやみつきになる。家に着いた瞬間外して、そのあたりに置き去りにするところまで同じなのは、親子だからでしょうか。
母が亡くなって20年近く経ちますが、最近では同じ仕草をするたびに思い出して、思わず笑ってしまいます。そして心の中で、「あの時はゴメンネ」と謝るのです。