今年1月には、長年お世話になった事務所を夫婦で退所し、個人事務所「TEAM KARASAWA」を立ち上げました。僕が全部背負わなきゃいけないようなネーミングになっていますが、名づけたのは彼女です。もっと別の名前はなかったのか聞いたけど、「それしかなかった」って言うんだよ。(笑)
実は、これまで所属していた事務所の創業者が一昨年、亡くなられてしまったんです。その方には本当にお世話になって、僕が事務所に入った20代のとき、彼に「アンタが死ぬまでやめないから」と伝えたほど。笑い話みたいですけどね。
僕は昔から、誰かのためにでないと演じられない。作品を観た人に勇気や希望を与えるのが俳優の仕事なんだけど、仕事を続けるうえで縁とか義理みたいなものを原動力にしているというか。
たとえば今回の映画をお引き受けしたのも、20年近く前に映画「20世紀少年」シリーズでお世話になった堤監督だったから。
それゆえに、創業者が亡くなって目的を失い、一瞬「これから誰のために演じればいいのだろう」と思ってしまった。そんなとき、うちの奥さんが「このあたりで初心に戻って、リスタートするのもいいよね」と言うのを聞いて、彼女のためになら演じられるなと思い、独立に踏み切りました。
これからも、主演だろうが脇役だろうが関係なく、面白い作品との出合いがあれば嬉しいですね。僕はもともと先陣を切って走るのは苦手なんです。なのに「あれやれ、これやれ」と周りに言われて前に出され――まあ、そのおかげで今があるわけですが(笑)。
とはいえ、今も表に出ることにこだわってはいないので、自分で楽しい企画を考えて実現できたらいいな、と。今年63歳になるけど、今は70代も80代もみんな元気じゃない? ケセラセラの精神で、これからも歩んでいこうと思っています。
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