ミュージカル初挑戦の『タイタニック』で…
ミュージカルに出演し始めた頃はわからないことも多く、いろんな方に助けていただきました。中でも印象に残っているのが、初めて出演したミュージカル『タイタニック』(2015年)で、共演した鈴木壮麻さんからいただいた一言です。
公演中、ミュージカル界の大先輩である壮麻さんに「アドバイスをください」とお願いしていたんですが、何を聞いても「大丈夫、できてるよ」と声を掛けてくださっていたんです。でもそんな壮麻さんが、一度だけ「ちょっと一つだけいい?」と言ってくださったことがあって。
『タイタニック』のラストでは、僕が演じた二等客のチャールズ・クラークが恋人と愛の言葉を交わしながら別れるシーンがあるのですが、当時の僕は感情を込めるつもりで、ちょっと「泣き」を入れて歌っていたんですよね。他の方には「あのシーンいいね」と言ってもらえていたのですが、壮麻さんには「泣きはないほうがいいと思う」と言われて。
当時は正直、何を言われているのかわからなかったんです。でも、せっかく先輩が言ってくださった唯一のアドバイスだったので、その日からやめてみたんですよね。
壮麻さんの言葉の意味がわかったのは、それから何年か後に、あるミュージカルを観に行った時でした。役者が「泣き」を入れた瞬間に、歌い手のテクニックが見えてしまって、お客さんの意識が物語ではなく、歌い方のほうへ向いてしまうことに気づいたのです。
本当に感動する場面では、テクニックなんていらない。気持ちを言葉にぶつけて相手に届いたら、もう十分に感動できる。そう気づいてからは、歌に対する考え方も変わりました。
