日本の医療に貢献した卯三郎
明治時代の医療を描く上で、りんと直美は「社会」や「弱者」について考えることになる。2人に新たな視点を与えるのが、商人の清水卯三郎だ。舶来品を扱う商店「瑞穂屋」の店主で、歌舞伎俳優の坂東彌十郎さんが演じている。
卯三郎は実在の人物で、幕末から明治にかけて活躍した実業家。漢学や数学、化学などの学問を修め、オランダ語や英語も通じた。商売をはじめ、パリ万国博覧会に参加し、茶屋を出店。東京・日本橋で、欧米から持ち帰った品を扱う「瑞穂屋」を営んだ。
「清水卯三郎と瑞穂屋についてはわからないことも多い。伊藤博文や大隈重信などの政治家は書簡や日記が残っているけれど、卯三郎はそういったものは私の知る限りありません。卯三郎の著作はありますが、研究者としては、郷土史家の方がいるくらいではないでしょうか」と明かす。
劇中での瑞穂屋は、舶来品が多く揃った不思議な店だ。店頭には大きなウサギのオブジェがあり、洋書も扱っているかと思えば、鎧も置かれている。和洋折衷の独特な雰囲気を醸し出す。
「実際に瑞穂屋でも最初の頃は、おそらく輸入書を中心に扱っていたと思います。卯三郎なりに、洋書が多くの人の目にふれてほしいという思いはあったのでしょう。卯三郎は歯科器械の輸入も手がけています。医学というと医師や研究者をイメージすることが多いかもしれませんが、薬や医療機器がないと治療できません。卯三郎自身は商人ですが、間接的にでも、日本の医療に貢献した人物だと思います」と評価する。