自分の親だけ担当する時代
伊藤 でもね、ここのところ、少し変わってきているみたい。熊本に夫婦とも友人というふたりがいるんですけど、男のほうが親の介護をしていて「大変だ、大変だ」という話をいつも聞いてるんですよ。でもそこの妻は、一切手を出さない、なんなら夫の親にはもう数年は会ってもいないって聞いて、私びっくりしたの。
阿川 いくつくらいのご夫婦?
伊藤 私より少し下、60歳になるかならないかってくらい。私の時代はありえなかったんですよ、そういうの。
阿川 私たちの時代はありえなかったね。
伊藤 ねえ。ここにいる50代、60代の編集スタッフたちも「夫の親の介護には行かない」と、しれっと言うし。いつから介護にそんな選択肢が増えたのかと、驚きました。阿川さんのお母さんのときはどうでしたか。お父さんのときから数年経って、変化を感じた?
阿川 幸いなことに、平日は泊まりがけで母の世話をしてくれる女性がいてくださって、彼女がいなかったら、ウチの介護は成り立たなかったぐらい。で、週末に実家で母と過ごす当番のローテーションをきょうだいで組んで、スケジュールを調整しながら乗り切りました。その当時は、私だけ独身だったけれど、「姉ちゃんにまかせる」なんていう空気はなかった。弟が当番の日に、母が粗相して弟から電話がかかってきたの。「どうすればいいの?」って。「まず服を脱がせて、お風呂場に連れていって、お尻を流して、タオルで拭いて、棚におしめが入ってるからそれをつけなさい」って。「そんなこと女だからできるんだよ」と言うので、「やればできる!! 頑張れ!」
伊藤 励ましたのね。
阿川 そう。「やればアンタにもできるぞ」って言ったの。そうしたら、しばらくして弟から電話がかかってきて、「できました。自分が生まれてきたところを初めてみました」って報告してきた。ものすごくほめましたよ。
伊藤 うんうん。意識は変わるのね。
