自分も遊んでみる

伊藤 妻の親に対してはどうですか。

阿川 私の連れ合いはやさしい人だから、当時はまだ籍が入ってなかったんだけれども、母を看るローテーションで人繰りがつかないとき「僕も泊まるよ」って言ってくれた。あと、母をちょっと預かってくれるとか、母と先にご飯を食べてもらうとか、かなり……。

伊藤 お連れ合いがいるってことで、違いましたか。

阿川 肉体的にも精神的にも、ハイ、助かりました。母は認知症だったから同じ話を繰り返すでしょう。そのときに答えを変えてみる、っていう方略をみつけてくれたのね。

伊藤 へえ。どんな風にですか。

阿川 たとえば、母が彼に「どちらのご出身?」って聞いている。「大分です」って彼が答えると「大分って、行ったことないけれど、どんなところ」って母が聞くの。「あったかいところです」って言うのを聞いて、台所でご飯作ってた私が「えー、大分行ったとき、雪が降ってびっくりしたことあったよ」みたいにチャチャを入れたのね。そしたらまたしばらくして、母が、あなたどこのご出身? 大分です。どんなところなの? って聞かれて「寒いとこです」。

伊藤 アハハハ、いいわね、最高ね。

阿川 そうやって、「また同じ話だ」――となるのではなくて、自分も遊んでみると。あとは、母が小学校の頃の話をずっと繰り返すんで、「中学は?」って言うと話題が変わっていく。そういうことを発見してくれる人だから、なんというか、とてもありがたかったですね。

※本稿は、『サワコと比呂美 女じまい』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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サワコと比呂美 女じまい』(著:阿川佐和子、伊藤比呂美/中央公論新社)

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