イラスト:星野イクミ
厚生労働省が行った「平成28年 国民生活基礎調査」で、悩みやストレスの原因の約30%は「人間関係」にあるという結果が出ました。なんとその半数は家族に関するものだとか。身近な家族にストレスを感じたらどう対処すべきなのか、メンタルヘルスの専門医・小山文彦先生に聞きました(構成=山田真理 イラスト=星野イクミ)

他人に対するストレスとは違う

世の中にはいろいろな性格の人がいるため、時にはストレスを感じる相手と遭遇してしまうことがあります。それは仕方のないこととも言えますが、相手が家族の場合、「仕方がない」だけで終わりにすることはできませんよね。そもそも家族に対して感じるストレスと、他人との関係で生じるストレスとは違う特徴があります。

たとえば職場や趣味の集まり、近所付き合いなどの“社会的な人間関係”には、「仕事をする」「役割をこなす」など、他人と行動を共にしなければならない明確な理由や目的があるもの。関係を持続させるためには、社会規範や常識、礼節、契約といったルールを皆が重んじることが必要です。

半面、家族に対しては、個の集合体というよりは一つの共同体という認識が強く、「支え合う」など気持ちの面でのつながりが重視される傾向があります。社会規範や常識を重んじなくても関係が切れにくいため、ワガママや暴言、無理な要求、約束を破るなど、他人との関係では許されない「甘え」がまかり通ってしまう。そのため、怒りや落胆など精神的なダメージがより大きくなってしまうのです。

もう一つ、家族に対してストレスを感じやすい原因に、「オン」と「オフ」を切り替えにくいことがあげられます。たとえばいくら苦手な上司でも、職場を出れば顔を合わせないで済みますし、ケンカをした友人とはしばらく冷却期間を置くことができる。他人はある意味で、わりきった付き合いがしやすいのです。

でも家族は一つの共同体ですから、同居の有無にかかわらず、相手の存在を意識せざるをえません。365日「オン」の状態が続いていると逃げ場がなくなり、気持ちのコントロールが難しくなってしまうのです。