その場で医師から「肺がんである可能性が高い」と言われたものの、自覚症状がなかったのでピンときませんでした。一応家族には報告して、どこか実感がわかないまま、大きい病院でCT検査やPET検査などの精密検査を行うことにしたのです。

2週間後、結果を聞きに行き、医師から「ステージIVの肺の非小細胞がんで、すでに脳と脊髄に転移しています」と告げられ……。

その瞬間は、なぜか冷静に受け止めることができました。どこか他人事のように感じていたのかもしれません。昔は本人には伝えなかったそうだけど、今ははっきりと本人に告知するのだなぁと、ピント外れなことに気を取られていたりして。

でも家に帰り一人で部屋にいると、だんだん現実味がわいてきた。頭のなかでは「死」が思い浮かぶばかり。これから自分はどうなるんだろうと怖くなって、思わず兄(鳥羽一郎さん)に電話をしました。

かなり動揺していたので、何を言ったか覚えていないのですが、どうやら「俺はもうダメだ」とか、「葬式や墓のことは任せる」みたいなことを言ったらしいのです。

とにかく兄に「バカヤロー!」と一喝されてハッとしました。「お前は治療に専念して、何があってもがんを克服しろ。俺も応援するから」と続く言葉を聞いて、少し落ち着けた。そこから現実を受け入れ、治療を受ける覚悟ができたのです。