松本 私には10歳年上の兄がいるんですけど、父が建てた家に引っ越した後、3年弱で兄は東京の大学に進学して、そのまま就職。だからか、実家にそれほど思い入れがありません。対して私は10年ほど住んでいました。父もそれがわかっていたので、兄にはそれなりの金額を生前贈与して、実家は私に託したのだと思います。
原田 それで、実家の管理があっこちゃんの肩にずっしりと。
松本 ええ。原田さん、ごきょうだいは?
原田 僕はね、養子なんだよ。実の父の兄、つまり僕にとっての伯父夫婦に子どもがいなかったから、兄や姉と暮らしていた横浜の生家から山口の伯父夫婦のもとへ、2歳のときに跡取りとして養子に行ったの。
松本 そうだったんですか。
原田 でも、ひとり息子として大切に育ててもらったので、僕にとっての親父とおふくろは山口の両親だと思ってる。で、あっこちゃんとは反対で、僕は親父に「実家の土地は、将来売ってもいい」って言われていたの。
松本 ありがたい話じゃないですか。
原田 僕に気を使ってくれたのかもしれないけどね。でも、「売ってもいい」と言われたおかげで、かえって売れなくなってしまった。だって、その土地は小学校の教師として長年懸命に働いてきた親父がなけなしの退職金をはたいて買ったものだと知っていたから。自分のものとは思えなかったし、それを売ることに罪悪感があった。
松本 とってもわかります。うちの実家も、会社員だった父が約3000万円のローンを組み、わざわざ宮大工に頼んで建てたこだわりの日本家屋なんですよ。そんな父の思いを無下にするわけにはいかないと、25年間もズルズル維持していたんです。