松本 私も当時、母が亡くなって10年だったので、夫や義母が「そろそろ手放してもいいんじゃない?」と言ってくれたことも後押しになりました。

原田 それで重い腰を上げた?

松本 はい。地元の自治体が運営している「空き家バンク」に申し込み、賃貸でも売却でもOKという条件で登録しました。

原田 へぇ~、そんな便利なサービスがあるんだね。

松本 そうなんですよ。で、登録した当初は、「月2万円で貸して」「250万円で売って」なんていう、こちらの希望とあまりにもかけ離れたものしかなかったんですけど、すぐ住めるようにリフォームしたのが幸いし、老後は高松に戻りたいというシニアのご夫婦が600万円で買ってくれました。

原田 それはよかった。お父さんが建てた家は残ったわけだから。僕の場合、一番つらかったのは、実家の敷地を更地にする際に庭木が引っこ抜かれてしまったこと。親父が丹精込めて手入れをしていた五葉松やフェニックス、メタセコイアなどの木がブルドーザーで無残に掘り起こされていくさまを見たときは、胸が引き裂かれる思いだったね。

松本 それは悲しい……。

原田 そしてついに家も取り壊されて、いざ実家がなくなってみると、地元との縁が断ち切られたような空虚感に襲われた。実家を処分することは、ふるさととの決別でもある。覚悟が必要なことなんだと身に染みた。

松本 私も、家が残ったのは嬉しかったですけど、名義変更して家の鍵を渡すときはやっぱり葛藤がありました。「本当にこれでよかったのだろうか? 父は怒っていないかな」って。

後編につづく

【関連記事】
<後編はこちら>原田大二郎「実家じまいを振り返ると《残しておかなきゃいけない》物は意外とない。両親の思い出は心にしまって」
阿川佐和子×伊藤比呂美「ブラじまい」から「実家じまい」まで、70代が赤裸々に語り合う!ズンバに俳句、歳をとるのも悪くない
松本明子 結婚後に埼玉で過ごしたのどかな日々。せり、よもぎ、さんしょう。お義母さんから野草のいただき方を受け継いで【2024編集部セレクション】