突然のイケメン訪問

暑さが上昇する最中の午後2時すぎに、インターホンが鳴った。「来た、来た」と、PCデスクから立ち上がり、カメラを見て一瞬、目を丸くして、驚愕。画面に映っていたのは解像度が低めのカメラでもわかる、イケメンの若者だった。

勝手な想像で恐縮だが、エアコンの取り付けに訪問してくる男性……といえば、屈強、もしくは大人の貫禄を携えた体型のおじさんだとばかり思っていた。このマンションに住んで以来、このパターンの来訪者が99%だった。

イメージ(写真提供:Photo AC)

「エアコンの取り付けに来ました」

「え、あ、ハイ! どうぞ!」

私の声、裏返っていやしないだろうか。我が家は2階なので開錠から到着まで時間がない。慌てて洗面所で髪型をチェックして、リップを塗る。PC作業用の牛乳瓶みたいなメガネから、外出専用のメガネに付け替えたのは乙女心だろうか。

(……不意打ちのイケメンは心臓に悪い)

仕事柄、タレントさんの取材が仕事のひとつなので、一級品のイケメンには慣れているつもりでいた。ただ取材は日時場所が決まったうえで「〇〇さん、入りまーす」と、登場してくるので、こちらの心身のスタンバイは万全だ。予想を180度覆した造形美が思いがけず、半径2メートル以内に現れるとそうはいかない。ただの多感多情おばさんが顔を出す。さらに自分のメンタルがあまりにもぜい弱だと思い知る。以前、近所の町中華の入り口で俳優の竹野内豊とすれ違って、腰を抜かしそうになった経験をふいに思い出した。

(……不意打ちの竹野内豊はまずいだろう)

当時も脳内をよぎったセリフが、今、ふたたび。

「失礼しまーす」

機材をマンションの廊下に置いて、スタッフがやってきた。2023年に『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)で、神尾楓珠が演じていた大工役に雰囲気が似ている。足はスラッとしていて、ふくらはぎは確実に私より細い。ニッカポッカ姿の神尾くんを見て(こんな細い現場男子、いないよなあ)と思っていたのに実在するとは。

「あの、作業中、リビングのエアコンを2時間くらい切りますよね。暑くないですか? 寝室のもう一台のエアコンをかけているんですけど、効かないです……よね……」

「大丈夫です。気にしないでください」

 そう言う彼は夏季、屋外で仕事をする人たちの共通ユニフォームになりつつある、ファン付きのベストを着て「ぶおーん」とあの音を立てていた。