信田 1975年生まれという若い島田さんが、旧日本兵の戦争トラウマに着目されたのは、どうしてだったのですか。
島田 私は2003年にイラク戦争を現地で取材しました。バクダッド陥落後しばらくして米軍が入ってきたとき、どんな屈強な兵士たちが来るかと思ったら、一見ひ弱な普通の若い人ばかり。貧困地帯の若者たちが大学進学の奨学金を得るため入隊し、本土勤務かと思ったら予想もしなかった戦地に送られた。終始おどおどしている兵士が大勢いるのです。
そのとき知ったのは、人は緊張し、恐怖に駆られて銃を撃つということ。現地では、米軍兵による民間人への誤射事件が相次いでいました。
信田 撃つ側にとってもつらく重い体験だった。戦地で亡くなった兵士の何倍もの若者が帰国後に自殺をしたと、映画にも出てきましたね。それだけ戦争のストレスが与える影響は大きい。
島田 なかには、夜中に突然叫んで家族を撃ち殺した人や、薬物依存に陥った若者も少なくありません。ある地域では路上生活者の4人に1人がイラクからの帰還兵という調査結果もあります。戦闘行為は、戦争のひとつの側面。むしろ長期にわたり人間の精神を蝕み、家族も含めて複数の人生を崩壊させていくのが戦争だと思い知りました。
信田 本当にそうですね。
島田 翻って日本ではこの問題にどう向き合って対処してきたのか、あるいはしてこなかったのか。それを知りたいというのがこの映画を撮ろうと思ったきっかけのひとつです。