答え

結論から申しあげます。あなたは彼と結婚なさらないことです。多分、あなたもそういう回答を期待していらっしゃると思います。お手紙の裏にも表にも何とかして結婚したい、というお気持ちは感じられませんもの。

あなたが悩んでいられるのは何でしょう。おそらく、2年間彼はけっこうあなたを楽しませてくれた。だから、あなたは、彼に対して今もすこし未練がある。それなのに、彼との結婚を断るためには、あなたなりの大義名分がほしい――そんなところでしょうか。つまり「好きな彼と結婚できない辛い理由――たとえば街にあふれる悲恋の歌の文句のような」それがみつからなくて困っているのではありませんか。

『わたしの人生案内』(著:沢村貞子/中央公論新社)

悩むことはありません。ハッキリいうことです。「私は短大を出るのにあなたは中卒。私の父は警察にいるのに、あなたはそれに反対の考え(?)をもったことがある。あなたと結婚すれば親が何にもくれない――だからいやです」それだけで十分です。

彼はそれをきいて怒るかもしれませんね。そんなことは理由にならない――と。私もそう思います。けれど、そんなことがそれほど気になるのは、あなたが彼をちっとも愛していなかった、という立派な証拠です。愛していないのに、あきらめたりやけになったりして無理に結婚することはありません。あなたも不幸になるでしょうが、彼はもっと不幸になるでしょう。涙あふれるような理由がみつからなくっても、この結婚はおやめになることです。

(「毎日新聞」1970年8月28日)