答え

あなたの「悩み」は、決して「ささいなこと」ではありません。若いあなたが「こんなことを考えている自分は、本当に醜い人間に見えて仕方がない」と、もがいている様子は読むものの心を打ちます。あなたのこれからの長い人生で、本当に大切なものは一体何だろうか? 人間らしく生きるために、ぜひそれを探して下さい。

彼はとてもやさしくていい人で、あなたを愛し結婚したい、と思っている。そしてあなたは、彼を尊敬し愛してはいるけれど、結婚はしたくない。だから、プロポーズされた時が別れるとき――それがつらくて、生きる力もなくなりそう、と苦しんでいらっしゃる。

2人の結婚を妨げているのは、あなたのご両親たちの反対――つまり、彼の学歴や実家の暮らしの程度が低いから、先々出世の見込みがない、かわいい娘はもっと世間的に立派な家へやる――ということですね。昔からよくある話です。

私の若いころ、財産家へ嫁ぐのを「玉の輿に乗る」と言いました。生意気な小娘だった私は「お金や権力のために、好きでもない人と結婚するのは、貧しいために体を売ったかわいそうな娼婦と同じじゃないの」と言い、私の両親も「そりゃそうだ」とうなずいてくれました。

私が一生、こざっぱりした気持ちで生きられたのは、その考え方のおかげです。好きな人と支え合って暮らせば、重い苦労もなんとかしのげるものです。あなたもそう思いませんか? 駄目なら……今のうち、別れることです。

(「読売新聞」1982年6月17日)

※本稿は、『わたしの人生案内』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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わたしの人生案内』(著:沢村貞子/中央公論新社)

恋愛・結婚、人間関係、介護、死別、生きがいについて……随筆家としても知られる名脇役の下にさまざまな悩みが寄せられた。

ときに厳しくも機微にふれる回答には、二度の離婚と三度の結婚を経て、人生の裏表を知った著者の濃やかな優しさがにじむ。

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