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今から思えば、とっくに歯車は狂っていた。なのに、気付かないふりをした。歯車の軋(きし)みを無視し、自分にこう言い聞かせた。今、この機会を逃せば一生このままだ。自分の人生を取り戻すのだ、と。
夕食の後、毎日更新のWeb記事を三本書いた。「かき氷」「朝顔」「イノシシ」についてだ。そのうちの「イノシシ」をアップした。最近、住宅街でも「イノシシ」の目撃情報が相次いでいる。一度、見たことがあるがぎょっとした。全国的な問題でクマほどではないが被害も出ているという。
時間のあるときに書きためたストックが五本あるから、全部で八本。一週間は仕事をしなくても大丈夫だ。
ゆっくり風呂に浸かって身体を温める。ドライヤーでグレイヘアを乾かすと、もう汗ばんだ。霧の印半纏に語りかける。
「ねえ、霧さん。あの夏は暑かったですよね。日傘を差していても倒れそうだ、って笑ってた」
蓬命酒はお湯割りにせず冷えた炭酸で割って、霧のパソコンを開いた。
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「記録4」
俺が一番に報告したのはやはり剣人たちだった。
井戸端で涼んでいると、瀬良が蚊取り線香を持ってきてくれた。
「霧さん。暑ないですか? クーラーの効いた部屋に入らんと、また熱中症になりますよ」
「ありがとう。ちょっと二人に話があるんだ。剣人を呼んできてくれないか」
「はい」
