「やってることが、そもそもおかしいだろ」
それでもロケ初日の早朝、空港までのバスの中で、私がカメラを脇に置いてカメラの取説ばかりずいぶん熱心に読んでいたので、当時まだ大学生タレントだった大泉洋は、心の中で不安に思ったそうです。「ロケの当日にまだカメラの説明書を読んでるこの人が、番組のカメラマンなんだろうか?」と。
たしかに傍目には、私のやっていることは頼りなく見えたかもしれない。しかし、私としては自信満々です。「撮り方は任せておけ」と、ただ、「カメラの電源ボタンはどれだ?」と、「テープをセットするには(当時はまだビデオテープの時代でした)、どのボタンを押せばいいんだ?」という確認です。万事堂々たるものです。
ただ、チェックなら前の晩にでもやっておけと、大泉洋は思ったんでしょうね。ごもっともなことです。たしかに考えが足りず、当日、現実に直面して初めて準備不足が分かって慌てて説明書を開いてバスの中で確認していたわけです。そして、そうしたケースはその後もたびたびありました。
でも、その考えの足りなさは私だけでなく、私を戦力外と見なしたチーフディレクターの藤村くんにも多々あったのです。たとえば初の海外ロケでオーストラリア大陸を縦断したとき、彼は、大陸を縦に貫くスチュアートハイウェイという一本道を走るだけだから道に迷うことはないだろうという、いたって素朴な判断から現地の地図は用意しなかったのですが、到着したダーウィン空港からレンタカーで走り出して高速を降りたとたんホテルまでの道に迷って分からない。でもダーウィンの町の地図はありませんからね。それでさんざん道に迷ってやっと気づいた、「いや、こりゃ地図がなきゃオーストラリア縦断は無理だわ。だってホテルにさえ着けないもん」と。それで翌日大慌てで地図を買う始末です。
この様子も大学生タレント大泉洋は逐一見ていましたから、『水曜どうでしょう』は番組スタート当初から「そんなことを今思いつくって、そもそもおかしいだろ」と、ツッコミどころがやたらと目につく現場だったのだろうと思います。