心を通わせる力は残る

山口晴保:赤ちゃんをイメージすると分かりやすいかもね。言葉は通じなくても、お乳をもらえば笑うし、大きな音には驚くし、撫でられれば安心する。

重度認知症の人も同じ。言葉のやり取りが難しくなっても、心を通わせる力は残ってる。人格って視点でとらえると、だんだん変化していくんだけど。

『認知症でも私のことは私が決める-日本の不自由とスウェーデンの自由』(著:宮本礼子、長谷川佑子、山口晴保/中央公論新社)

宮本:私の外来に通っていた86歳の女性は重い認知症で、娘さんの顔を見ても「どちら様ですか?」と尋ねるほどでした。でも、困っていることはないですかと聞くと、「どこまで話したか思い出せなくて、寂しくなるんです」「欲しいものをうまく伝えられないのがつらいです」と話してくれました。

話を聞いていると、切なくなります。認知症になっても、深い悩みや寂しさを抱えているんです。