橋田壽賀子さんとの対談
私は以前に、NHK連続テレビ小説「おしん」など、数々の名作を世に送り出した脚本家の橋田壽賀子さんと対談をしたことがあります。当時、橋田さんは92歳で、著書『安楽死で死なせて下さい』(文春新書)には、「天涯孤独だから、鎮静剤を使って安楽死がしたい」と書かれていました。
対談の席でも、橋田さんは安楽死を希望されていましたが、その内容は緩和ケア病棟などでがん末期の患者さんに施す「持続的深い鎮静」に似ていました。
「持続的深い鎮静」とは、死ぬまで深い鎮静状態が続くように、鎮静剤を調節して投与することです。多くは、予後数日と見込まれる患者さんに対して、痛みの緩和ができないときに行われます。鎮静状態にして意識は回復させません。
「持続的深い鎮静」は医療行為なので、家族の同意などがあって末期の患者さんに行うときは殺人にはなりませんが、橋田さんが望んでいたのは末期になる前でした。そのタイミングだと医師が殺人罪か自殺幇助に問われます。
また、鎮静剤を投与した時点で患者さんは「心の死」を迎え、数日以内に「肉体の死」を迎えるので、二度死ぬのです。私は「持続的深い鎮静」を「抜かずの宝刀」と呼んでいて、最後の手段ではありますが、抜かないことに価値があると思っています。
