さて、どうしようか、と吉晴は思考を巡らせた。三島は素直な性格だ。しかも弱っている。こうした方がいい、とあまり直接的な意見はしたくない。卒論の結論と同じで、それは三島自身が見つけなければならない。ただ、自分の研究室を訪ねてきた時点で、彼女がなんらかの状況の変化を欲していることはわかる。

「職場に定着して一通りのスキルを、っていうのは昔からある一つの考え方だけどね。最近は第二新卒って言葉があるくらい転職市場も活発だし……たとえば、試しに大学のキャリアセンターに行ってみたらどうかな。今の情報を仕入れて、視野を広げて、それから判断しても遅くないと思うよ」

「キャリアセンター……すみません、私、就活の時は使わなかったんですけど……あそこって、卒業生も行っていいんですか?」

「大学によるけど、うちは卒業から三年間は卒業生も利用できるよ。予約すれば個別面談を受けられるし、大学に届いている求人情報も見られる」

「ありがとうございます。行ってみます」

 キャリアセンター、と復唱し、三島はスマホを起動させた。施設の場所と利用時間を調べているようだ。悲しみから意識が離れたのか、三島の涙がとまった。吉晴は少し砕けた口調で切り出した。

「その、三島が相談した先輩もさあ」

「はい」

「ぶっちゃけ辞めたいんだと思うよ? 呪文みたいに自分に言い聞かせていることを、そのまま三島に言っただけだって」

 三島は目を見開き、それから眉を下げて小さく噴き出した。

「ぶっちゃけ、私もそう、思います」

「笑いながらいこう、笑いながら。悩みすぎると呼吸が浅くなって、うまく考えられないよ。悩むよりも動いた方がいい」

「はい。……お昼どきにお邪魔してすみませんでした。先生に会って元気が出ました」

「よかったよかった」

 吉晴は置き時計をちらりと見た。十五分。思ったより早く相談が収束した。これなら午後の講義の支度も間に合いそうだ。

 ふと、置き時計の下に挟んでおいた、二枚のカラフルなチケットに目が行った。