溌剌とうなずき、三島はふたたび重そうに膨らんだ仕事鞄を肩にかけて研究室を出て行った。
休みの日にまで、ずいぶんたくさん――しかもわざわざ職場に取りに行くほど余裕のない――資料読みのタスクを抱えているだなんて、もう少し強く転職を勧めた方がよかっただろうか?
一秒だけ悩み、吉晴は考えるのをやめた。自分が悩んだところで、最終的に決断するのは三島だ。人生の時間は有限で、自分はこれから講義の準備、教授会の準備、ゼミ生から提出された卒論の第一稿の講評と、自分自身の論文の執筆を行わなければならない。
――三限はねー、ミクロ経済学。
――あー、カガミン。
――カガミンってなんか考えていることがわかんないってか、ロボットみたいだよね。人の心とかあんまりなさそう。
そういえば、学食で自分の講座を取っているらしい学生がそんな会話をしているのを聞いたことがある。自分の考え方は、もしかしたら一部の学生には非人間的で冷たく感じられているのかもしれない。
でも、まあ、毎年ゼミの希望者は多いし、すべての学生に好かれるなんてどだい無理な話だ。
吉晴はパソコンの画面を切り替えると同時に、三島のことを意識から外した。教職という営みのうねりへ、意識を澄ませて入っていく。
