「親戚でした」と先生に言い訳し、さっさと帰ればよかったと悔いながら、気づくと私は手紙を書いていた。はじめてその存在を知った母。なんて呼ぼうか。私にはお母ちゃんがいるから、ここはやっぱりお母さんだな。
身長、体重、好きなことなどを書き、従姉と夏祭りに行ったときの浴衣姿の写真を入れた。住所は北陸地方のある町。それを地図で探したりもした。しかしこの手紙を出すことはなかった。両親にバレたら、と怖くなったのだ。
数日して、また学校に電話があった。
「りかちゃん、手紙送ってくれた? おかしいわ、着かないの。住所ちゃんと書いた?」
「はい、ちゃんと書きました」
最悪な嘘をつきながら、私は心のなかで泣いた。同時にK先生が両親になにか言ったらどうしよう、とその日は夜までハラハラした。
中学生にもなると、父と再婚した継母が、4歳と2歳だった兄と私を育ててくれたとわかっていたが、家族の誰もこの話に触れなかった。
実母は自宅に電話をしてくるようになり、父の激しい怒声とガチャンと受話器を置く音が聞こえてくる。やはりあの手紙は出さなくてよかったのだ、と私はベッドで泣いた。