願わくば後世に残るような好いものを

でも、いまわたしの思っていることは、一生、何十年という間、一人の人だけを相手に結婚生活をしている人を見るとね、なんて素晴らしいんだろうって、思うのよ。

わたしは、それをする努力が足りなかった。残念なことですけれども。

それとも――仲よく死ぬまで一緒にいる人は素敵だけれど、仲よくなくても、仲なんてどっちでもいいという風に悟ってしまう人もいるでしよう。わたしは、悟らなかったなぁ、一度も。

北原と別れたときは泣きませんでした。もう飽きていたのよ。向うも飽きていたでしょうけれど、ちょうど都合のいいときにこっちも飽きるのよね。

恋愛なんて、言葉は美しいけども畜生道、雄雌の世界ですからねぇ。

いまは、惚れもせず、惚れられもせず、とても安気で、いいですね。わたしもこの年になったら、「客観する」ということを覚えました。

客観性が澄み切って、小説も上手く書けるようになったと思います。これからの余生に、願わくば後世に残るような好いものを書きたいと思いますよ。

※本稿は、『宇野千代 ちょっと自伝』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。

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『宇野千代 ちょっと自伝』(著:宇野千代、文:三宅菊子/マガジンハウス)

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