「定期的なバイトを入れてしまうと、急なオーディションに対応できなくなるんですよ。女優でやっていくためのアルバイトなのに、それで本来の仕事を逃すなんてばかばかしいですから」(江口さん)

アルバイトをせずにやっていくと決めて

新聞配達の仕事は1年続けました。新聞奨学金の60万円をもらったタイミングで正式な劇団員になれたので、芝居に専念するために辞めたのです。研究生になる時に借りた、劇団の入所金12万円を販売店の所長に返したので、手元に残ったのは48万円。アパートを借りてもおつりがくる金額で、初めての大金にワクワクしたことを覚えています。

そこからはもうきまったアルバイトをせずにやっていくと決めて、お金がなくなると1日限りの交通量調査の仕事を受けたり、仲のいい映画製作会社で領収書の計算を手伝ったりしながらやりくりしていました。

定期的なバイトを入れてしまうと、急なオーディションに対応できなくなるんですよ。女優でやっていくためのアルバイトなのに、それで本来の仕事を逃すなんてばかばかしいですから。ただ、何だかんだでうまくまわっていて、蓄えが尽きるとCMが決まってまとまったお金をいただけたりして、結構やっていけるものだなと思いました。

アパートのグレードも少しずつ上がり、新聞配達の後に住んだ部屋は風呂なしの3畳一間で2万7000円。ここに5年くらいいて、次がいよいよお風呂付きの6畳間。ガスコンロも2口あり、この頃ようやく自炊するようになりました。それまでは菓子パンとかかじってましたから。

その次に引っ越したのはきれいなマンションでしたが、青梅街道沿いで車の音がうるさくて2年で退去。その次の次の次が今住んでいるところです。横になると窓から空しか見えなくて、朝は太陽の光で目が覚める明るい部屋。ものすごく気に入っています。