最初から、女優として食べていけると思っていた

私は地元にいる自分が嫌で、楽しいことなんかひとつもなくて、自分の居場所を求めて東京へ行きたい、でもお金がないってずっと思ってて。劇団の研究生になって、東京に行こうと思った時には2万円しかなかったけど、いざ一歩踏み出してみたら何とかなった。だから覚悟さえ決まれば、どんな状況でも動けると思うんです。動くまではいろいろ考えて怖くなるけど、やってしまえば案外なんとかなる。

女優として食べていけるかと不安になったことは一度もありません。もう他の仕事はしないと決めていましたし。今だって一生やっていける自信があるわけではないですが、お金がないならないなりに、あるお金で暮らせるように、家賃も食費も抑えて生活を合わせていけばいいだけの話。

ただ最近は忙しすぎて「誰か助けて!」というのはありますね。去年なんて、夜中に泣いたりしてましたもん。「なんでこんなことしてるんやろ。こんなはずじゃない」って。この時期は全然楽しくなかったです(笑)。

でも仕事って案外そんなものなのかもしれません。みんな自分の希望で好きな仕事を選んでいるはずなのに、職場に着いた瞬間から帰ることを考えていたりして。「お金がもらえる」とか、「一日の仕事を終えて、ようやく家に帰れる」とか、「あと2日行ったら会社が休みだ」とか、「今日はこの人がいるから頑張ろう」とか。

そういう日々の小さな楽しみを見つけることが、働く楽しみになるんじゃないでしょうか。褒められることや成果が出ることって、なかなかないですしね。どんな仕事だって、全部が全部楽しいわけではないですから。

仕事をしていて一番楽しいなと思うのは、好きな役者さんや監督さんとご一緒できている時。結局は人ですね。「この人がいるから今日は楽しいな」とか「観る人が喜んでくれるから頑張ろう」とか、そういうことでしかないような気がします。

私が女優をしていることに対する家族の反応ですか? 何もないです。父はもう亡くなっているのですが、母からも「この前のドラマ観たよ」と連絡をもらったことは一度もありません。そもそも東京に行くと言った時も「あっそう」という感じでしたから。

きょうだいもそれぞれの生活で忙しく、私の活動に興味を持っている暇はないようです。特に姉はアメリカで主婦をしているので、日本の芸能人のことなんて全然知らないんじゃないかな。一度、妹に芝居を観せてあげようと招待したら、1幕で帰りましたからね、美容院の予約があると言って。二度と呼ぶかと思いました。(笑)

私は19歳の誕生日に上京して劇団に入り、現在も籍を置いています。ひとつの劇団に入って辞めてまた別の事務所に入ってという役者の人が結構いるんですが、私は初めてお世話になったところに今もいる。これってものすごく幸せなことだと思うんです。自分、よくぞこの劇団を選んだなって。

今後演じてみたいのは男の役でしょうか。楽器を演奏する役もいいですね。練習が楽しそうなんで。でもこういうことを言うと本当にそういう依頼が来たりするんですよね。すいません、適当に言っただけなんで聞き流しておいてください。(笑)