「アンティファ」が扇動しているのか
このような過激な運動をトランプ大統領はじめ米政府高官は、アナーキスト系のネットワーク「アンティファ」(反ファシストの意味)が挑発していると主張している。
〈抗議デモ拡大の背景には、ソーシャルメディアなどを使った組織的な動きがあるとの見方もある。トランプ大統領は31日のツイートで、全米の抗議デモを扇動しているとして、極左組織「アンティファ」をテロ組織に指定する考えを示した〉(6月1日『読売新聞』)
また、六月四日の記者会見で、米国のウィリアム・バー司法長官は
〈中西部ミネソタ州の黒人男性死亡事件を受けて全米に広がった抗議デモの一部が暴徒化したことについて、反ファシズムを掲げる極左組織「アンティファ」や類似の過激派組織による「扇動の証拠がある」と述べた。〉(6月6日『読売新聞』朝刊)
筆者は、トランプ氏やバー氏の主張には十分な説得力があると考える。1991年12月のソ連崩壊後、世界的にマルクス主義の影響が退潮するとともにアナーキズムの影響力が世界的規模で拡大している。アンティファは、そのような潮流の一つだ。アンティファは、緩やかなネットワークで、司令塔を持たない。この点もアナーキズム(無政府主義)と親和的だ。
〈アンティファという名称はアンチ・ファシズム(反ファシズム)を意味し、1930年代初頭にアドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツの台頭に立ち向かおうとした社会主義者らのグループに由来する。
米国の反ファシスト・グループは過去20年以上にわたり、さまざまな社会正義の問題について運動を展開してきた。今週、ニューヨーク・アンティファは「われわれはファシズム、人種差別、性差別、同性愛者・トランスジェンダー嫌悪、反ユダヤ主義、イスラム嫌悪、そして偏見のない世界を信じ、闘う」とツイートしている。
ただ、アンティファの活動は基本的にネオナチや白人至上主義者グループへの対抗に的を絞っており、右翼の過激派を公の場から追放し、カウンターデモを組織するというのが戦術の大半だ。
しかし、トランプ氏が勝利した2016年の大統領選で右派グループが活気づいたため、現在アンティファは右派との直接対峙や破壊的な抵抗運動に携わっている。
2017年1月20日のトランプ大統領就任式の際には、黒い服とマスクを着用したアンティファをはじめとする大勢の集団が首都ワシントンで抗議を行い、窓を壊したり車を燃やしたりした。
また、2017年8月にはバージニア州シャーロッツビルで白人至上主義者やネオナチのデモ隊と衝突し、乱闘となった。それ以降、両者はポートランドやカリフォルニア州バークレーなど各地で衝突を繰り返している。
しかし米議会調査局によると、アンティファは本部や全国的な組織を持たない「分散的な、独立した急進的志向を持つグループや個人の集まり」で、大半が非暴力的であるが「自分たちの信念を広めるためならば、一部のメンバーは罪を犯すこともいとわない」という。〉(6月2日AFP)