鍋の蓋をあけてみると…

私は好奇心を押えきれず、いそいで鍋の蓋をあけてみると、そこには大鍋いっぱいの豚の脚先がニラと共にたかれてあった。しかもいい匂いが鼻をうち、べろんとした皮の柔かそうなところ、ゼラチン状のとろりとした脂身、何とも旨そうではないか。大阪下町の庶民料理のチマチマ文化なんか、けしとんでしまうほど、豪快な料理なのだ。

これを食べるときは、お箸なんかつかっていられない。骨ごと手にとってしゃぶりつくのだ。その合間に、熱い湯で割った焼酎を飲み、飲んでは夢中で豚の足にかぶりつく。舌で、爪のあいだの肉をさぐり、柔かな皮や脂身をすすり、骨のスジをしがみ、両手の指、唇のまわり、鼻のあたまを脂で光らせて次から次へとしゃぶる。いくらでも食べられる。

(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

豚は牛より美味である、と奄美の人々は信じているが、たしかに牛より淡泊で、飽きがこない。しまいに指は脂でネトネトするが、舌のあと味はさっぱりしている。豚は焼酎にまことによく適(あ)う。

「うまいか?」

と夫がいうので、返事する間も惜しくて、

「ウン!」

といって私は大口をあけてかぶりついていた。義母はそれからあと、安心して、こんどはもう、袂で鍋をかくしたりせず、持って来てくれるようになった。