褒め制度導入

そんな私でも溺愛している甥(18)と姪(15)のお年玉を無視するわけにはいかない。将来的に彼らに頼る予定はさらさらないが、寄るべなき身分である以上、死ぬ時にサインのひとつでもお願いすることになるかもしれないと思うと、これはあきらかな投資。無駄金ではない。ただ年齢を重ねるごとに、お年玉を渡しても反応は薄くなり、照れながら「ありがと」と言うだけ。またそれも可愛いのだが、伯母としてはもう少しいいリアクションがほしい。そこで2026年の正月から導入したのが「褒め制度」。正月に我が家でおせちを囲んでいる場で私が説明をはじめた。

何年か前に甥と姪に渡していたふつうのお年玉袋。ここでもコミュニケーションを取りたいと足掻く伯母がいた

「いいですか? ここにひいちゃん(甥や姪たちからの私の愛称)は千円札を10枚用意しました」

(甥&姪)うなずく。

「今から挙手制でひいちゃんのいいところ、褒めどころをひとつずつ言ってください。採用された際には千円ずつ渡します。まだお財布にはもう少しお札が入っています。ペイペイは使いません。子どもだからってお金がもらえるわけではないのです、それなら、出資者側になにかメリットがあってもいいですよね。さあ、ひいちゃんをチヤホヤしてください。さ、スタート!」

いつも生返事しかしない思春期ふたりも金がもらえるとなると顔つきが一変、真剣な面持ちで力強く手を挙げてくる。

「ハイ! ハイ! ハイ! ひいちゃんは東京で頑張ってる!」

「よし、1000円」

「ハイ! ハイ! ハイ! ハイ! えっとー、センスのいい服を着ている!」

「はい、1000円」

「ハイ! ハイ! ハイ! 肌がきれい!」

「オッケー、1000円」

「ハイ! ハイ! ハイ! 二重がきれい!」

「それは二重じゃなくてシワ! ダメ!」

「ハイ! ハイ! ハイ! ごはんを作るのが上手!」

「よーし、1000円」

「ハイ! ハイ! 難しい言葉をいっぱい知ってる!」

「そうよ〜、1000円!」

この調子で30分近く、甥と姪は伯母を褒めることに奮闘してそれぞれに5千円を手にしていた。楽しそうなうえに満足げだった。その様子を見たついでに母たちも笑っていて楽しそうだった。

来年の正月は地元でラジオの仕事がなければ帰省はずらす予定でいる。昨今の帰省ラッシュはあまりにも移動人数が多くて、辟易してしまった。でも甥と姪にどうにかして会って、たとえ私とふたりきりでも、褒め制度は決行するつもりだ。「ペイペイで送って!」。それならその前にビデオ通話で私を褒めてから、にしようか。

褒め制度、それは大人の権限を利用して、甥や姪とコミュニケーションを取りたい伯母さんの遠吠えである。

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